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大阪地方裁判所 平成4年(わ)4696号 判決

本店所在地

大阪市東成区東今里一丁目七六番地

日本ペンション株式会社

右代表者代表取締役

深沢登喜雄

本店所在地

大阪市北区天満四丁目一番一五号

(旧本店所在地 大阪市北区天満二丁目二番二一号)

株式会社松下ホーム

(旧商号 株式会社松下興発)

右代表者代表取締役

松下彰良

本籍

大阪市北区天満二丁目六番

住居

同市同区天満二丁目六番三-七一六号 コープ野村天満橋

会社役員

深沢登喜雄

昭和二〇年一二月一二日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官熊谷保出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人日本ペンション株式会社を罰金四五〇〇万円に、被告人株式会社松下ホームを罰金二〇〇〇万円に、被告人深沢登喜雄を懲役二年四月にそれぞれ処する。

被告人深沢登喜雄に対し、この裁判の確定した日から四年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人日本ペンション株式会社(以下、「被告会社日本ペンション」という)は、大阪市中央区釣鐘町一丁目四番三号に本店を置き(平成三年九月一日に大阪市東成区東今里一丁目七六番地に本店を移転)、不動産売買等を目的とする資本金四〇〇万円の株式会社であり、被告人株式会社松下興発(平成五年三月八日に株式会社松下ホームに商号変更、以下、「被告会社松下興発」という)は、同市北区天満二丁目二番二一号に本店を置き(平成五年三月八日に大阪市北区天満四丁目一番一五号に本店を移転)、不動産売買等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人深沢登喜雄(以下、「被告人深沢」という)は、被告会社日本ペンション及び被告会社松下興発の実質的経営者として、両社の業務全般を統括していた者であるが、被告人深沢は、右被告会社両社の顧問税理士であった車谷好彦と共謀のうえ、

第一被告会社日本ペンションの業務に関し、法人税を免れようと考え、

一  別紙修正貸借対照表(一)記載のとおり、昭和六三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社日本ペンションの実際の所得金額が五七九四万三五三四円であったのに、収支に関する記帳を行なわず、かつ、仕入を水増計上するなどの行為により、その所得の全部を秘匿したうえ、平成元年二月二八日、大阪市中央区大手前一丁目五番六三号所在の所轄東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が三六六万八六三三円で、これに対する法人税額が零円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書(一)記載のとおり、被告会社日本ペンションの右事業年度の正規の法人税額二三三七万六〇〇〇円を免れ、

二  別紙修正貸借対照表(二)記載のとおり、昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの事業年度における被告会社日本ペンションの実際の所得金額が二億七三〇九万二八〇三円であったのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成二年二月二七日、前記所轄東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二七六万五九四二円で、これに対する法人税額が八二万九五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書(一)記載のとおり、被告会社日本ペンションの右事業年度の正規の法人税額一億一三七三万八六〇〇円と右申告税額との差額一億一二九〇万九一〇〇円を免れ、

三  別紙修正貸借対照表(三)記載のとおり、平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社日本ペンションの実際の所得金額が一億一四五七万八四九七円であったのに、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、平成三年二月二八日、前記所轄東税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が二四八万一〇三一円で、これに対する法人税額が一〇一万二二〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書(一)記載のとおり、被告会社の右事業年度の正規の法人税額四四九五万一二〇〇円と右申告税額との差額四三九三万九〇〇〇円を免れ、

第二  被告会社松下興発の業務に関し、法人税を免れようと考え、別紙修正貸借対照表(四)記載のとおり、平成二年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における被告会社松下興発の実際の所得金額が二億〇二五〇万〇六二四円であったのに、収支に関する記帳を行なわず、かつ、仕入を水増計上するなどの行為により、その所得の全部を秘匿したうえ、平成三年二月二八日、大阪市北区南扇町七番一三号所在の所轄北税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の欠損金額が七二九万二五一四円で、これに対する法人税額が零円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙税額計算書(二)記載のとおり、被告会社松下興発の右事業年度の正規の法人税額八〇一二万円を免れた。

(証拠の標目)

注・以下において、証拠中、末尾の括弧内に記載した漢数字は、証拠等関係カードの検察官請求にかかる証拠の請求番号を、また、「弁」と付記した漢数字は、弁護人請求にかかる証拠の請求番号をそれぞれ示している。

判示事実全部について

一  被告人深沢の当公判廷における供述

一  被告人深沢の

(1)  検察官に対する供述調書三通(四五ないし四七)

(2)  大蔵事務官に対する質問てん末書(四四)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書一三通(記録第二二-一号(一二)、記録第二二-五号(一三)、記録第二二-一三号(一五)-記録第二二-一四号(一六)、記録第二二-一八号(一七)、記録第二二-一九号(一八)、記録第二二-二九号(二一)、記録第二二-三一号(二三)、記録第二二-三四号(二五)、記録第二二-五〇号(二七)、記録第二二-五二号(二九)、記録第二二-五七号(三三(再請求番号五七)、記録第二二-五六号(四三))

判示冒頭及び第一全部の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第二二-一一号(一四)、記録第二二-三三号(二四)、記録二二-四九号(二六)、記録第二二-八七号(三八))

一  検察事務官作成の捜査報告書(東税務署の所在地についてのもの)(八)

一  国税査察官作成の調査報告書(四九)

一  被告会社日本ペンション作成の証明書(五〇)

判示冒頭及び第一の一の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(平成元年二月二八日に申告した被告会社日本ペンションの確定申告書写についてのもの)(四)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(被告会社日本ペンションの期間が昭和六三年一月一日から同年一二月三一日までのもの)(一)

判示冒頭、第一の二、第一の三及び第二の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二通(記録第二二-五一号(二八)、記録第二二-五三号(三〇))

判示冒頭、第一の二及び第一の三の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第二二-三〇号(二二)、記録第二二-八三号(三四)、記録第二二-八四号(三五)、記録第二二-八五号(三六))

判示冒頭及び第一の二の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(記録第二二-八六号)(三七)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成二年二七日に申告した被告会社日本ペンションの確定申告書写についてのもの)(六)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(被告会社日本ペンションの期間が昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までのもの)(二)

判示冒頭、第一の三及び第二の事実について

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第二二-二七号(一九)、記録第二二-二八号(二〇)、記録第二二-五四号(三一)、記録第二二-五五号(三二))

判示冒頭及び第一の三の事実について

一  大蔵事務官作成の証明書(平成三年二月二八日に申告した被告会社日本ペンションの確定申告書写についてのもの)(七)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(被告会社日本ペンションの期間が平成二年一月一日から同年一二月三一日までのもの)(三)

判示冒頭及び第二の事実について

一  被告会社松下興発代表者松下彰良の検察官に対する供述調書(四八)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書四通(記録第九-一号(三九)、記録第九-二号(四〇)、記録第九-三号(四一)、記録第九-五号(四二))

一  登記官嶽釜寿雄各認証の平成四年一二月一五日付登記簿謄本(五一)、平成五年七月二日付登記簿謄本(弁八三)

一  検査事務官作成の捜査報告書(北税務署の所在地についてのもの)(一一)

一  大蔵事務官作成の証明書(平成三年二月二八日に申告した被告会社松下興発の確定申告書写についてのもの)(一〇)

一  被告会社松下興発作成の証明書(五三)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(被告会社松下興発の期間が平成二年一月一日から同年一二月三一日までのもの)(九)

(法令の適用)

罰条

被告会社日本ペンション 判示第一の一ないし三の各所為についていずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(いずれも、情状により、罰金はその免れた法人税額に相当する金額以下)

被告会社松下興発 判示第二の所為について法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状により、罰金はその免れた法人税額に相当する金額以下)

被告人深沢 判示第一の一ないし三及び第二の各所為についていずれも刑法六〇条、法人税法一五九条一項

刑種の選択 被告人深沢の判示第一の一ないし三及び第二の各罪について、いずれも所定刑中懲役刑を選択

併合罪の処理

被告会社日本ペンション 刑法四五条前段、四八条二項(判示第一の一ないし三の各罪の罰金額を合算)

被告人深沢 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第一の二の罪の刑に法定の加重)

主刑 被告会社日本ペンションを罰金四五〇〇万円、被告会社松下興発を罰金二〇〇〇万円、被告人深沢を懲役二年四月

刑の執行猶予 刑法二五条一項(被告人深沢に対し四年間猶予)

(量刑の理由)

本件は、被告会社両社の実質的経営者で業務全般を統括していた被告人深沢において、被告会社両社の法人税申告にあたり、収支の記帳を行なわず、かつ、仕入を水増計上するなどの行為により、欠損金を計上し、あるいは、わずかな所得のみを申告し、被告会社日本ペンションについては、昭和六三年一月から平成二年一二月までの三事業年度の法人税合計一億八〇二二万円余を脱税し、被告会社松下興発については、平成二年一月から同年一二月までの事業年度の法人税八〇一二万を脱税した犯行で、被告会社両社合わせての脱税額は二億六〇三四万円余と巨額でありほ脱率も、被告会社日本ペンションについては、三事業年度合計で約九九パーセントと極めて高率で、被告会社松下興発についても、全額を脱税した悪質な事案である。そして、その脱税の態様、方法も、顧問税理士であった共犯者車谷の教示があったにせよ、販売目的の別荘地購入に際し、ダミー会社を介在させてダミー会社との間の架空の契約書を作成するなどして、仕入の水増を行ない、利益を圧縮する巧妙かつ悪質なものであり、脱税の動機についても、とくにしん酌すべき余地もなく、以上の点などからすると、被告会社両社の刑責は重く、とりわけ、被告会社両社いずれの脱税にも関わった被告人深沢の刑責は重大である。

しかし、他方、被告人深沢は、事実関係を認めて、現在反省していること、被告会社両社においては、本件ほ脱にかかる法人税本税、重加算税、延滞税を納付し、地方税等についてもその半分以上は既に納付済みであること、さらに、被告人深沢にはこれまで業務上過失傷害や宅地建物取引業法違反等による罰金刑を受けた以外に前科はないことなど、被告会社両社及び被告人深沢のためにそれぞれしん酌すべき事情もある。

そこで、これら諸般の事情を総合考慮し、被告会社両社及び被告人深沢をそれぞれ主文掲記の刑に処したうえ、被告人深沢に対してはその刑の執行を猶予する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田隆)

修正貸借対照表(一)

〈省略〉

修正貸借対照表(二)

〈省略〉

修正貸借対照表(三)

〈省略〉

税額計算書(一)

〈省略〉

修正貸借対照表(四)

〈省略〉

税額計算書(二)

〈省略〉

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